人類進化の謎を解く その4


前回、どれだけ外的な変化があっても、内的な変化がなければ、ヒトへ移行したとは見做せないと書きました。例えばチンパンジーはある種の自己意識を持ち、道具も使用でき、多少の二足歩行さえするので、外的にはほとんどヒトと変わりありません。

ところが彼らは自分を取り巻く世界内の存在に過ぎず、その存在は、自然界の許容能力の範囲内に限定されてしまいます。彼らがヒトのように、自然界と調和した段階を超えることはないのです。サルは自然界の範囲内にあるが、ヒトは自然界の範囲を超えてしまった。そうなる決定的要因は内的変化にあったのです。

では、内的な変化はどのようにして発生したのでしょう?そこで前回説明した性に関する部分をもう一度思い起こして下さい。発情期を察知できなくなったヒトは、視覚回路を介して性欲を常時起動できるようにしました。

発情期に限定された性交渉から常時発情への変化は、ヒトの脳内に性を司る内部領域すなわち心的な領域が形成されたことを意味します。絶対の危機に直面したことで飛躍が起き、ヒトの脳内に性に関する観念の領域が形成されたのです。脳内に一旦この領域が形成されれば、最終的には、性的な想像や妄想だけで性欲の起動が可能となるのです。

このように、自然界においてありのまま存在できなくなるという絶対の危機は、自然界と自分自身を自己内部で分離、加工して、加工された環界(=身体と自然界の双方)に対して新たな心的領域が対応するような構造を、ヒトの祖先の内部に生み出していきました。

ヒトは自然界とその中に存在する自分自身をも対象化し、客観視することで、サルより高次の意識領域を持ち、その領域の存在により、環境改変の能力を持つのです。

以上のような経緯で、動物では決して見られなかったある種の抽象化された内部領域、言い換えれば心的な領域=自我や観念の領域、がヒトの内部で形成されました。ヒトの祖先は、身体と自然界の双方から疎外された領域を、自分の内部で自己分離し、確定したのです。

話が少しややこしくなりましたが、簡単に纏めると、本能を基盤とする行動規範が、大地溝帯の発する気により崩壊したことで、自然界と自分自身はいずれも客観的な対象物として認識されるようになり、それに対応する心的領域がヒトの内部に形成された、ということです。

こうした経緯を経て、ヒトは本能的行動規範が崩壊した世界の中で、自分を保持するための新しい規範を獲得しました。また、自己を世界の中で客体視することにより、自らの中に自己認識が芽生え、遂にヒトとしての自己意識を獲得する段階へと至ります。

自己認識や自己意識の発生は、それを媒介として、他者も同様な認識・意識を持つとの理解に繋がっていきます。と同時に、既にご説明したような理由で言葉が発生し、同様な理解を持つ他者とのコミュニケーションにより心的領域は循環的に深化します。

それは二足歩行や道具の使用と相俟って、必然的に文明を生み出す道に連結し、この瞬間、ヒトは他の動物とは本質的に異なる方向へ歩み始めたのです。

ヒトとチンパンジーの全塩基配列の違いは1.23%で、重複配列、並び替えを考慮しても全ゲノムレベルで4%弱しか差がなく、同じ属であると判断されます。外見上、遺伝子分析上では差異がないも同然です。

従って、ヒトと、チンパンジーも含む他の動物との違いは―環界すなわち身体と自然界の双方から疎外された心的領域を内部に持つかどうか―ということに帰せられます。動物は自然界においてその範囲内で予定調和的に存在しますが、ヒトは自然界において予定調和的に存在できなくなった唯一の動物なのです。

ここまでの説明でまだ飲みこめない部分があろうかと思います。それは本能的行動規範が崩壊し、心的領域なるものが突然出現する経緯です。本能的行動規範の崩壊と心的領域出現の間には飛躍があるため、両者を論理的に繋げられません。ではこの問題にどう説明を付けるべきなのでしょう?唯一の答えは次の通りです。

この種の新しい領域の獲得には、常に、ある種の必然的な飛躍が伴います。絶対的ピンチに直面したときだけ発現するようなプログラムが刻印されていると言っても良いでしょう。新しい世界を開くためには、一旦死に直面し、その上で再生を果たすようなプロセスが不可欠です。死は一種の特異点。この特異点を経由することで、再生が果たされます。そのため、外部的観察からは、飛躍としか受け取れないのです。

例えば、非生命から生命への進化が起きた際も同じ構造が発現しています。意味がややわかりにくいと思いますが、この問題は別の機会に詳しく触れます。

言い換えれば、共通祖先がヒトへ進化するとは、ある存在が前とは全く違う存在に変容した、つまり相(フェーズ)が転移したということを意味しています。死と再生の象徴である蚕は、繭の中で仮死状態となり、蛾に変容して繭を割って外に出るのですが、このケースが相転移の説明にかなり近いと思われます。(そして蚕ノ社は秦氏の神社でした。彼らは死と再生の秘密を知っているのかもしれません)

いずれにせよ、種の崩壊に直面したヒトの祖先は、心的領域の形成により環界を改変することで、何とかこの危機を克服し、打開しました。けれども、自己の存立基盤が不安定である事実は、依然ヒトにとって大きな恐怖でした。ヒトは自己の存立基盤が崩壊する恐怖を隠蔽、抑圧し、自我を保護する目的で、環界の改変を加速していきます。

それは同時に、あるがままの自分として生きる道、つまり動物のように本能的行動規範に従う予定調和的生き方の放棄で、いばらの道になってしまいます。この過程をうまく乗り越えられなかったヒトの祖先の多くは、消滅を余儀なくされ、最終的にホモサピエンスのみが残存しました。

間断なく襲う危機と恐怖。この恐怖は、多少の努力により環界を改変しても、なお克服できるものではなかったはずです。ヒトの祖先は環界の改変をしゃにむに押し進め、自らの心的領域に対応する人工的環境までも形成していきました。

ヒトは自己の観念や共同なる幻想を際限なく生み出し、この世界に己が存立する場を作り出してきたのです。このようにして形成されていった自己観念や幻想の所産こそが、私たちの文化や文明、あるいは宗教なのではないでしょうか。

言い換えれば、ありのままでは生存を脅かされるという不合理な恐怖を隠蔽し抑圧することで、ヒトとしての進化の道筋が定まりました。文明や文化とは、ありのままでは存立できない自己を、この世界の中で存立させるために、ヒトが生み出した心的領域・幻想領域の実体化であり、自然の際限なき疎外と対象化であり、恐怖からの逃走やその抑圧だったのです。

文明というヒトにとって不可欠なものは、自己の存立基盤の崩壊という恐怖を隠蔽し抑圧することによって発生しました。これが、ヒトの経験する最初の抑圧で、原抑圧とも第一次抑圧とも呼べるものです。

ようやく私たちは、人類発祥の場面から文明社会へと至る筋道を見出したようです。ここまでに要した時間はおよそ500万年。気の遠くなるような長さですが、宇宙の歴史150億年に比較すればとても短く感じられますね。

また、「パワースポット探訪記」と「人類進化の謎を解く」の記事は、当初別個のカテゴリーとしてスタートしましたが、実は背後で密接にリンクしていました。秦氏や伊勢神宮の謎も先々これらとリンクしていきますが、その前に解明すべき謎が数多くありますので、しばしお待ちください。

近年パワースポットがブームとなっています。なぜかくも私たちはパワースポットに惹かれるのでしょう?私たちは、それが自分たちの出自に繋がっているということを無意識裏に理解して、惹かれているのかもしれません。

          ―『旧約聖書』創世記の謎を解く その1に続く―
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人類進化の謎を解く その3


その2では、過去に提起された人類進化の仮説を検討し、それらの説は誤りであると結論を出しました。にもかかわらず、共通祖先はヒトへと進化しました。これは事実であり、その背後には明確な理由があるはずです。

私たちは今までの人類発祥物語とは異なったシナリオで、ヒトとチンパンジーの共通祖先がヒトにまで進化していく理由と、その過程を考え直すべきでしょう。

酔石亭主は次のように考えます。人類の発祥は、実は進化などではなく、喪失であると。ヒトは、樹上移動や四足歩行など霊長類を始めとする生物が普遍的に採用していた移動方法を喪失したから、残る唯一の選択肢である二足歩行になりました。霊長類は豊富な体毛を持つのが普通なのに、そのような普遍性を喪失したから、ヒトはほんの少しの体毛しか持たないのです。

この事実は、ヒトの祖先に何か重大な事件が起こり、本能を基盤とした行動原理が崩壊したため、自然と調和した状態で存在することができなくなったことを示しています。でもどうしてそんな事態となったのでしょう?

前回、人類の発祥は大地溝帯の影響によるものとご説明しました。それが正しいとすれば、大地溝帯の影響でヒトの祖先は自然と調和的に存在できなくなったはずです。ここで考えるべきは、大地溝帯がヒトの祖先にどのような影響を与えたかです。

そこで以前の記事、「酒匂川あれこれ」、「パワースポット探訪記」を参照してください。パワースポットとされるのは構造線上やプレート境界上などの地殻変動が活発な場所でした。

ルーシーやそれより100万年前の化石とされるラミダス猿人が発見されたのは、エチオピアのアファール地方ですが、これらの場所もプレートの活動が極めて活発で、地中からは強いエネルギーが放射され、現在でも地磁気異常や重力異常をもたらしています。アファール三角地帯は伊勢を凌ぐ世界最強のパワースポットであると言っても過言ではないでしょう。

人類が発祥したのはアフリカ大陸を引き裂くようなエネルギーを持つ場所でした。だとすれば、大地溝帯より放射される強力なエネルギー(以後は総称して『気』とします)が共通祖先の遺伝子情報に影響を及ぼし、遺伝子の欠損や組み換えが起き、その結果ヒトへの分化が発生したとは考えられないでしょうか?

ではここで、人類の進化は大地溝帯が発する気の影響により起きたという仮説を立て、検証を続けることにしましょう。

大地溝帯が発する気によって、ヒトの祖先は自然状態(本能に基づく行動原理)を喪失し、サルにとっては常識以前の、腕渡りや木登りなどの樹上移動、四足歩行が不可能となりました。身振りや表情を活用した高度なボディ・ランゲージによるコミュニケーションもなくしました。そして、赤ん坊を成熟した段階で生み出すことができなくなり、未成熟のままで産み落とすようになったのです。

また、自分の排卵時期を察知することが不可能となり、体毛までも喪失します。これらは、自己の存立を脅かす危険で不安定な状態であり、ヒトの祖先が自分を取り巻く環境に不適応な存在となったことを示しています。このようにして、あらゆる側面で本能を基準とした行動規範の崩壊が起こったのです。

これこそが、共通祖先からヒトへの移行の一次要因(原要因)でした。自然状態の喪失は、それまで自然に対し予定調和的であった自己の存立基盤を崩壊させました。ヒトの祖先は、死に直面するほどの恐怖を覚えました。それも当然でしょう。自分を取り巻く環境へどう対応すべきかの、動物にとっては自明すぎるほど自明な基準が消滅したのですから。この予定調和的世界の破綻により、ヒトが他のあらゆる動物から分かれる前提条件が―ヒトの祖先にとってはそのままでは自己の存立基盤が崩壊するという恐るべき前提条件が―整ったのです。


ここで先ほどの、人類進化は大地溝帯が発する気の影響により起きた、という仮説を思い起こしてください。

この仮説が正しいとすれば、影響を受ける前の共通祖先(基本的にサルと同じ存在)と私たちヒトとの間に大きな差異が見られるはずです。従って、次にその差異と差異が発生した原因を追及しいくことにします。

最初に、サルとヒトの生殖行動の違いを見ていきましょう。サルには発情期があります。発情期とは受胎可能時期ということで、この時期に交尾すればサルたちは子孫を授かることになります。発情期になればメスのお尻が赤くなるなどサインが現れ、サルたちは自動的に交尾行動に入ります。

つまりサルたちは特にそれを意識に昇らせることなく、自然に生殖行動を取る訳です。この事実は彼らが、動物にとって普遍的で一般的な本能という行動規範の枠組みの中に存在していることを示しています。

一方ヒトの場合はどうでしょうか?私たちヒトには発情期という特定な時期がなく、言い換えればその時期を知るすべがなく、代わりに常に性欲を起動することができ、いつでも性行動が取れるようになっています。

この差異は何に起因するのでしょう?答えは既に出ています。サルとヒトとの共通祖先にとっては当たり前の本能という行動規範の枠組みが、大地溝帯が発する気により崩れたことに起因しています。

その結果、共通祖先はサルにとっては至極当然な、受胎可能時期すなわち発情期(排卵期)のみに限定された交尾活動ができなくなりました。これは彼らが大変な危機に直面したことを意味します。妊娠の可能性が大幅に低下し、種族全体の存続が脅かされる事態となったのですから。

では、共通祖先はどうこの危機を克服したのでしょう?彼らは常時性欲を惹起させることで対応しました。下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる式の対応ですね。具体的には、まずメスは乳房と尻を巨大化させました。一方、オスはペニスを巨大化させたのです。これは他のサルでは見られない特徴です。ヒトはオスもメスも、その巨大化した部分を見れば興奮しますが、見るのは視覚です。

大地溝帯に棲む共通祖先は交尾時期を察知できなくなったので、その前提で種の存続を図るには、視覚的回路を経由して性欲を常時起動させ、性交渉を可能にさせるしかなかったのです。

獣は自然の摂理に沿い、妊娠の可能性のある時期を知り、その時期だけしか交尾しません。いつでも欲情するのは正しくヒトの特性です。ヒトが常に欲情するのは、妊娠の可能性の低下=種族の存続の危機、に対するやむを得ない措置だったと言えるでしょう。

この例が示すように、環境に不適合となった以上、そのような状態に置かれたヒトの祖先が生き延びる唯一の道は、不適合となっても自己が存立できるよう自分自身や環境を再構成し、改変して、再構成された環境に身を置くことで自己の生存を確保することでした。

樹上移動、四足歩行の喪失に対しては、猛獣など天敵の攻撃に対し極めて不利で、しかも不安定な歩行法である二足歩行を採用せざるを得なくなりました。その結果、木の実など餌の採取が困難になるのです。それを克服するために、狩猟を行うようになり、霊長類にあっては珍しい肉食をメニューに取り入れました。

また、二足歩行により手が自由になったことで、道具の使用が可能となります。それだけではありません。二足歩行はより大きな脳を支えることも可能にしました。

次に、身振りや表情を使う高度なボディ・ランゲージによるコミュニケーションを喪失したことにより、ヒトの祖先に極めて異常な事態が起きました。喉頭が後退したのです。これは他の霊長類や哺乳類には見られない特長で、あのダーウィンでさえも、到底正気の沙汰とは思えないような構造だ―と頭を抱えたそうです。飲んだり食べたりしたものがいつ肺の方へ落ちてしまわないとも限らない構造だからです。

しかし、喉頭の後退でできた空洞を利用し音声を発することが容易になり、声帯も発達して、言語による伝達が可能になりました。集団による狩猟では、言葉による意志の伝達が威力を発揮します。ヒトの祖先はボディ・ランゲージによる意志の伝達が不能になった事態を何とか克服したのです。

また赤ん坊が未熟な状態で誕生するため、子猿にあっては普遍的な離乳期直後からの採餌活動が不可能となりました。このため、オス、メスペアーの家族を形成し、異常に長期間面倒を見る以外に子供の自立、存立を確保する方法がなくなったのです。サルにとっては普遍的なグループ単位の行動基準が崩れ、いわゆる理想的とされる、オスメスペアーと子供による家族が形成されたのです。

体毛を喪失したことにより怪我の可能性が増大し、低温への適応性が悪化しました。これに対しては、洞窟の利用、火の利用、動物の皮で体を覆うことにより対処することになりました。

上記の検証によって、次のような結論が得られました。人類は、進化上の偶然や気象変化からサルと別れてヒトになったのではありません。それは大地によって齎されました。大地溝帯から放射された強力な気の作用により、共通祖先が本能に基づく行動規範を喪失、その結果ヒトが誕生したのです。

しかし、ヒトの進化において真に重要な部分は、外的な変化ではなく、目に見えない内部領域における本質的な変化です。どれだけ外的な変化があっても、内的な変化がなければ、ヒトへ移行したとは見做せません。次回は、ヒトの内部領域にどのような変化が起きたのかを見ていきましょう。

             ―人類進化の謎を解く その4に続く―

人類進化の謎を解く その2


前回でアフリカの大地に人類の発祥の謎を解く鍵があると書きました。もうご存知かもしれませんが、ヒトがアフリカの大地とりわけ大地溝帯周辺で進化を遂げたことをベースとして、次の三つの仮説が生まれています。

まずサバンナ説です。サバンナ説は、今からおよそ800万年前に始まった大地溝帯の活動により山々が形成され、西からのモンスーンを遮ったため、結果東側が草原化して、そこを移動するのに二足歩行せざるを得なくなったことから人類進化が始まった、とするものです。ところが、人類学上有名なルーシーは森と水が豊富なエチオピアにいました。これではサバンナ説は成り立ちません。サバンナ説を唱えたコパン自身、追いつめられて自説を撤回せざるを得なくなりました。

ルーシー:約340万年前のものと推定される化石が、エチオピアのアファール地方ハダールにおいて発見され、「ルーシー」という愛称が付けられたことからその名があります。

そこで、サバンナ説の弱点をカバーできるモザイク説なる仮説が唱えられました。モザイク説は、当時この地域は草原ではなく森林と草原が混在していた状況だったので、森林から森林へ移動するのに二足歩行したというもの。サバンナ説が困難となり、整合性を取るために唱えられた亜流的仮説で論外です。

上記の2説は、大地溝帯の形成に伴う気象変化が人類進化を促したというものですね。

最後にアクア説を見ていきましょう。これはちょっと突飛な説ですが意外に説得力を持っています。アクア説は、島で共通祖先が半水生活を送った結果、水の浮力で二足歩行が可能になり、水から陸に上がっても半水時代と同じく二足歩行できたというものです。

この仮説に登場する場所はダナキル地塁。エチオピア北東部からジブチの海岸線がそれに当たります。島なんかないじゃないかと疑問の声が上がりそうですが、プレート活動に伴う地殻変動により、今から約600万年前ダナキル地塁は陸から分離して島状態だったそうです。

地塁(ちるい):ほぼ平行に走る複数の断層によって区切られ、両側に対して相対的に隆起し、山地・大地など凸状の地形を呈する地塊もしくはその地形のこと。
                         出典:フリー百科事典『ウイキペディア』


陸から切り離されたダナキル島は乾燥化が進み、森林が枯れ食料となる餌は少なくなっていきます。危機に瀕したヒトの祖先たちは海の浅瀬や海中で餌を採るしか生存を確保する手段がなくなりました。これにより彼らは海水中で活動するのですが、浮力のお蔭で労なくして二足歩行が可能となります。いつしか海水は引き、ダナキル島は再び陸の一部となり、島に閉じ込められていた祖先たちは陸に戻りますが、陸上でも海中での歩行法を踏襲、二足歩行するようになった、というのがこの説のシナリオです。

アクア説によれば、ヒトが半水生活を送った結果、現在の私たちにもその痕跡が残っているとのこと。例えば・・・、

生まれたての赤ちゃんは水の中に入れても息を止められ、溺れずに泳ぐことができる。しかし10カ月を過ぎると泳げなくなる。
ヒトの体毛が薄く皮下脂肪で体温調節をするのは海中にいた証拠である。
体毛のない哺乳類は例外なく水生か、長時間水の中にいることを好む。
ヒトは他の類人猿と異なり体毛の方向が泳いだときの水の流れに一致して、渦を巻くように生えている。
等々数多くの説明がなされています。

しかし半水生活を証拠立てる化石はなく、また水中ではワニやサメなどの天敵にとても対抗できないことなどから、この説を認める学者は現在ほとんどいません。

以上、サバンナ説、モザイク説、アクア説のいずれも人類発祥の秘密を解き明かすものではありませんでした。けれどこの3説にはある重要な共通項があります。それは人類進化が大地溝帯で起きたという点です。

だとすれば大地溝帯は、その活動に伴う気象変動、島の形成などとは全く異なる理由で人類進化に決定的な影響を及ぼしたと考えられます。そこで、人類進化は大地溝帯の影響によって起きたとの仮説を立て、検証作業をしてみましょう。

       ―人類進化の謎を解く その3に続く―

人類進化の謎を解く その1


はじめに
人類進化の謎などという大テーマを突然ここで取り上げるのは、唐突に思われるかもしれません。しかしこの謎解きは、全く無関係に見える「パワースポット探訪記」、「酒匂川あれこれ」、「相模国の秦氏」などの過去記事とも密接にリンクしていきます。ですから、この記事を最初にご覧になった方は、お読みになる前に是非これら過去記事に目を通しておいてください。

さて、宇宙ステーションに人が滞在し、情報が全世界を一瞬のうちに駆け巡る時代になっても、私たち自身のことである人類進化の謎はまだ解かれておりません。己を知るのは極めて重要なはずなのに、なぜかまだ答えにたどり着けていないのです。

現在の人類学は共通祖先からヒトへと繋がる化石の発見に重きを置いているようです。けれども、人類進化の本質が内的な世界の変化である以上、形質の変化を幾ら追及しても最終回答は得られません。(と酔石亭主は勝手に考えています)

つまり、ヒトとサルの共通祖先のあるグループが環境変化により二足歩行するようになった。その結果手を自由に使えるようになり、道具を使い始め、脳が発達してヒトに分化したという考え方は逆であり、あることを契機に内的な変化を起こした共通祖先がヒトへと分化し、その結果二足歩行が可能となり、道具を使うようになった、と考えるべきなのです。

では共通祖先に何が起き、どのような経緯でヒトへ分化したのでしょう。そこでまずは、チンパンジーと人類の遺伝子を比較してみます。

ゲノム配列上から見ると、両者の違いは1.23%しかないとの結論が既に得られています。ただ重複配列、並び替えなどを考慮すると違いがさらに2.7%増加するので、全ゲノムレベルでは4%弱の違いということになります。この差異は極めて小さなものに過ぎません。言い換えれば、遺伝子の分析だけでは、なぜヒトがかくもサルとは異なる進化を遂げたのかを解明できないということになります。

ゲノム:生物の持つ遺伝子の全体を指す言葉。

化石でも遺伝子分析でも人類進化の謎は解けない。では私たちはどうしたら良いのでしょう?過去の方法論が行き詰った場合には、今までとは異なる新たなアプローチを試みる他ありません。それにより少しでも真相に迫れればと思います。

酔石亭主はアフリカの大地にこそ謎を解く鍵があると考えています。そこで次に、人類が発祥したとされるアフリカの大地を見ていきましょう。

人類が発祥したのはアフリカの大地。そこには地質学上有名なアフリカ大陸大地溝帯があります。大地溝帯は、西部地溝帯と東部地溝帯の二本により構成され、中でも重要な東部地溝帯は、死海に始まり、アカバ湾、スエズ湾、紅海、そしてアデン湾の底からアファール三角地帯と呼ばれるエチオピアの低地を横切り、エチオピア高原を二分し、トゥルカナ湖からケニア、タンザニアへと至ります。この六千キロに及ぶ長大な東部地溝帯は、東部アフリカを南北に縦貫する断層陥没帯です。

大地溝帯は、深部からの熱供給により隆起した大地が、東西に分かれるマントル上昇流によって地殻に二つの並行な断層が生じ中央部が陥没したもので、もともと合体していたアフリカ大陸とアラビア半島とを引き裂く運動によって形成されました。
 
大地溝帯のアフリカ大陸部に属するエチオピア地溝帯は、アファール凹地で紅海地溝帯とアデン湾地溝帯とに会合します。この会合点はアファール三重会合点という特異な地点であり、ヌビアプレート、アラビアプレート、ソマリアプレートが分離しつつある発散型プレート境界を形成、アファール三角地帯とも呼ばれています。

大地溝帯に沿ってアフリカ大陸は裂けつつあり、数百万年後にはこの裂け目に海水が流入、地溝帯の東側は大陸から分離していくでしょう。


大きな地図で見る
アファール三角地帯のグーグル地図画像。

紅海の中に地溝帯がくっきりと見えますね。またアデン湾でも同様に見えています。画像上でエトルリア、ジブチ、エチオピアと書かれた部分を線で繋ぐとほぼアファール三角地帯と重なります。アフリカ大地溝帯はこの三角地帯からエチオピアの左下方向へと続いています。

そこでエチオピアの左下方へ画像を移動、拡大してみましょう。点々と湖が続いている様子が認められるはず。これらの湖は大地溝帯の活動でアフリカの大地が引き裂かれつつある過程をはっきりと示しています。

グーグルアースでもっと接近して大地溝帯を見ると、噴火口があちこちにあります。酔石亭主はグーグルアースでこの辺りを見るのが好きなのですが、その様子は地球のカサブタさながらです。

そしてこのアファール三角地帯こそが人類発祥の地であり、大地溝帯に沿った地域から最も多く人類化石が出土しているのです。

       ―人類進化の謎を解く その2に続く―

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