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三島由紀夫割腹自殺の謎を解く その1


あの衝撃的なニュースが飛び込んできたのは、1970年11月25日、今から40年も前のことです。大学の構内で友人と話をしていたとき、構内放送でこのニュースが流れ、周囲は一瞬にして騒然とした空気に包まれました。

実は三島由紀夫の自死について書こうかと思っていたのですが、40年も前の出来事ですから、この事件を実感として知っておられる方は総人口の半数以下のはずです。そんな現状で書いても意味がないかなと考えあぐねていたところ、日経新聞が11月20日の一面「春秋」欄にて取り上げていましたので、意を強くしました。

問題は、三島の死について多くの評論家が既に論評しているため、どれだけ新しい視点を打ち出せるかわからないことです。自分で独自の考えだと思っていても、既に同じ観点で誰かが書いている可能性もあります。ブログに書くには似つかわしくなさそうなテーマとも思えます。しかしあれこれ悩んでいても時間の無駄。三島の40年目の命日に当たる今日こそが、謎解きをスタートするに最もふさわしく、思い切って書き始めましょう。

まず日経の記事から一部分引用します。

「自衛隊が決起すると本気で考えていたとしても、自らの美学の具現だったとしても常人には理解できぬ行いだ。残した作品のきらめきと、血なまぐさい最後とが断絶したまま事件から40年である」


残した作品すなわち三島の思想の結実と、彼の最後とは決して断絶はしていないはずです。その回路を探すことが、割腹自殺の謎を解く鍵になるのではないでしょうか?

三島由紀夫割腹自殺の謎を解くには、彼の最後の著作となった「豊饒の海」四部作(新潮社)を見ていくしかありません。三島は「浜松中納言物語」に想を得た輪廻転生の物語を書こうとしました。

第一部「春の雪」は大正初期を時代背景とする王朝風恋愛小説で主人公は公爵家に生まれ、自分の精神世界のみに関心のある松枝清顕。清顕は綾倉伯爵家の聡子と禁断の恋に落ちます。聡子は身ごもり、奈良の月修寺に入り出家します。清顕は月修寺を訪ねますが、聡子に会えるはずもなく、高熱を発し倒れます。友人の本多繁邦に連れられて帰京した清顕は転生を示唆するかのように、「又、会うぜ。きっと会う。滝の下で」と不思議な言葉を残してこの世を去るのです。

この物語は、本多に輪廻転生を見守る役が振られており、四部作の最初から最後まで出てきます。松枝家には飯沼茂之が書生として寄食しているのですが、第二部「奔馬」では彼の息子である飯沼勲が主人公となります。

清顕はタイ王室の王子たちと親交があり、本多も交え鎌倉の別荘(以前ご紹介した旧前田家別邸、現在の鎌倉文学館)に行きます。本多は別荘で、清顕の左脇腹に小さな三つの黒子(ほくろ)があることを知ります。本多と清顕は、王子たちと輪廻転生ついて話し合います。そしてクリッサダ王子の妹がジャントラパー姫(=月光姫ジン・ジャン)でした。ある日タイから、月光姫が死んだ、との知らせが届くのですが、第三部「暁の寺」では、2代目の月光姫が主人公となります。

つまり第一部において、清顕に続き輪廻転生の主役となるべき人物の伏線も張られ、その証となるのが、本多によって確認される三つの黒子だったのです。 三島の用意周到さが窺えます。

注:引用部分は旧字体と旧仮名遣いを現代のものに改めています。

            ―三島由紀夫割腹自殺の謎を解く その2に続く―



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