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新田義貞鎌倉攻めの謎を解く その2


前回の錦絵の位置関係から単純に考えると、134号線が既に開削されており、舗装されていない134号線を通って新田義貞は鎌倉側に既に出ているかのように見えます。もちろん鎌倉時代に134号線は開削されていません。稲村ケ崎の切通しは昭和3年に開削され、昭和13年に片瀬江の島線が開通しており、その旨の解説石板が切通しを過ぎた鎌倉側に設置されています。

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昭和13年3月に設置された「道路開鑿記念之碑」です。

表面の半分以上がはがれ落ちてほとんど読めませんが、稲村ケ崎は又霊山ケ崎…鎌倉時代における要害なり…以下はほぼ読めず…片瀬鎌倉線を新設したことをもって碑に記すと言った内容が書かれています。ここで注目すべきは、稲村ケ崎が霊山ケ崎に含まれるような書き方になっている点です。(碑文は、稲村ケ崎は又霊山ケ崎とも称され…と繋がっているように推測されます)

歴史的な経緯としては、昭和10年より坂ノ下側で大規模な埋め立て工事が行われ、昭和13年に完工し稲村ケ崎を片瀬鎌倉線が通るようになったそうです。

いずれにしても、新田義貞は稲村ケ崎を過ぎた場所で龍神に祈り太刀を捧げています。だとすれば、稲村ケ崎を越えた地点から鎌倉側に歩いてその場所を特定するしかありません。まず134号線から海の堤防に沿った遊歩道に降りることとします。

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遊歩道に入った位置から見た稲村ケ崎です。

関東大震災により、陸は震災以前と比較しておよそ1m隆起しています。また鎌倉時代以降も関東大震災を凌ぐとされる元禄大地震などがあり、その時点での隆起などを考慮すると、常識的に見て海を渡るのは極めて困難と言わざるを得ません。(海を渡る実験をされた方も明治時代にいるようです)さらに歩を進めます。下の写真は遊歩道を鎌倉側に進み、歩道に合流して歩道を少し歩いた位置から見た稲村ケ崎です。

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歩道から見た稲村ケ崎。

いかがでしょう?この辺りの位置が、鎌倉時代に134号線があったと仮定すれば、錦絵に描かれた場所とほぼ一致するように見えないでしょうか?

稲村ケ崎
もう一度錦絵です。比較してください。

写真「歩道から見た稲村ケ崎」の右半分は断崖絶壁となっています。次にこの断崖絶壁を見てみましょう。

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断崖です。

断崖は写真左から高度を上げ、一度ピークに達した山が谷となって下り、もう一度高度を上げ、最初のピークより高くなっています。この点は記憶に留めてください。

次に、「歩道から見た稲村ケ崎」の写真と錦絵を細かく比較してみます。錦絵では、義貞が稲村ケ崎から海側に湾曲した場所で太刀を捧げています。一方写真は134号線が陸側に向けてカーブしています。つまり絵と写真は道の方向性が逆になっています。

錦絵が正しいと仮定した場合、義貞は実景における海にかなり入ったような位置で太刀を捧げているのです。錦絵では、太刀を捧げる地点が稲村ケ崎よりもっと海に突き出している位置にあり、絵の左端はさらに海に向かって伸びているように見えます。絵と実景は矛盾していますが、この点にもご留意ください。

ところで、写真「歩道から見た稲村ケ崎」の位置は、錦絵が正しいとして比較した場合、より重大な欠陥があります。どこに欠陥があるかわかりますか?

もう一度よく錦絵を見てください。そう、この絵では稲村ケ崎の奥に七里ガ浜の二つの丘陵が見えていますね。だとすれば、七里ガ浜の丘陵が見えるポイントを探す必要があります。そう思いさらに鎌倉側へと歩を進めるのですが、道はどんどん北側に向けて回り込んでいきます。つまり海岸線を鎌倉方面に進めば進むほど、七里ガ浜の丘陵は見えない位置になっていくのです。


大きな地図で見る
グーグル画像です。

「歩道から見た稲村ケ崎」の写真撮影位置は稲村ケ崎右側の134号線を示すマークの辺りです。マーク左の白く見える部分が断崖です。一方二つの丘陵は稲村ケ崎左側の134号線を示すマークの位置です。この画像から明らかなように、稲村ケ崎を越えた鎌倉側から七里ガ浜の丘陵を見るのは絶対に不可能となります。

錦絵において義貞は、七里ガ浜の丘陵が見える地点で太刀を捧げているのに、実景で見える地点はない。この矛盾をどうすれば矛盾のない形に再構成できるのでしょう?その謎を追及していくと、新田義貞渡渉伝説の真の姿が見えてくるはずです。

                 ―新田義貞鎌倉攻めの謎を解く その3に続く―
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