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鎌倉大仏の謎 その4


鎌倉大仏を巡る謎。これを探るヒントを求め、ともかく現場に行ってみましょう。江ノ電長谷駅で降りて、ほぼ真っすぐ北に歩きます。T字路を右折すると由比ヶ浜大通りですぐに左折すれば、染屋太郎大夫時忠の甘縄神明神社ですが今日は立ち寄りません。ただ、大仏のすぐ近くに時忠の旧蹟があるのはどこかで繋がりが出そうに思えます。そのまま北に進むと、道の左側に桑ケ谷療養所跡の石碑があります。

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石碑です。

忍性はこの場所にも療養所を開設して病人や困窮民の救済に当たっていました。大仏と目と鼻の先に忍性の施設があるのは、なぜか意味ありげに思えます。道がやや上り坂になると大仏前です。仁王門を潜って中に入りましょう。いや、ちょっと待ってください。仁王門の前に大きな石柱があります。

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石柱です。

聖武帝艸創東国三十三ヶ国総国分寺」と彫られています。(艸創=草創つまり創建したという意)前回Wikipediaの長い記事を引用しましたが、こんな内容は書かれていませんでした。なんじゃこれは、と思わざるを得ません。東国三十三ヶ国の総国分寺が現在の高徳院にあったとすれば、天平時代鎌倉は東国の一大中心地になってしまいます。石柱の横側には享保元丙申云々と彫られており、1716年に建てられたもののようです。

天平時代の鎌倉で頭にすぐ浮かぶ人物と言えば、そう、甘縄神明神社に祀られる染屋太郎大夫時忠です。神社は鎌倉大仏のほぼ真南に鎮座して、距離も近くお隣さんのようなものです。また忍性の桑ケ谷療養所も同様でした。


大きな地図で見る
甘縄神明神社と鎌倉大仏の位置関係をグーグル画像で。大仏が上の端で甘縄神明神社が下の端。

そして、藤原鎌足の玄孫である時忠の子供が良弁でした。ここであれっ、と思いませんか?聖武天皇と良弁はいずれも東大寺大仏に係わる最重要人物だからです。ここで「新編相模国風土記」を見てみましょう。

此地モト真言宗。浄泉寺ノ舊跡ニテ。其先天平年中。行基浄泉寺ヲ開基シケルニ其後星霜ヲ経テ。明応年中廃寺トナリ。

この地は元来真言宗浄泉寺の旧跡で、天平年間に行基が浄泉寺を開基したのだが、その後の年月を経て、明応年間に廃寺となった。

何と行基の名前が出てきました。行基もまた東大寺大仏造営の立役者です。なお現在の鎌倉大仏(=高徳院=清浄泉寺)の旧跡が、浄泉寺ですが、両寺院の間に繋がりはありません。

清浄泉寺建立序之記ノ写曰。艸創本願聖武帝也。天平九年丁丑年三月。創建東国総国分寺。

清浄泉寺建立序之記の写しによれば本願が聖武天皇で、天平9年3月に東国総国分寺を創建した。

しかし風土記は、高座郡に国分寺の旧跡があるので、浄泉寺を東国総国分寺とするのは非であると断じています。確かに国分寺跡が海老名市にあるのですが…、必ずしも非とは言えないような気もします。

そこで東大寺の大仏と鎌倉の大仏を対比してみます。

東大寺大仏:発願/聖武天皇、開山/良弁、勧進/行基 日本の総国分寺/奈良 
鎌倉大仏:創建/聖武天皇、お隣の時忠の子/良弁、開山/行基、東国の総国分寺/鎌倉


見事な対比が浮かび上がってきました。なおこの対比では染屋太郎大夫時忠だけが浮いているような印象を受けますが、必ずしもそうとは言い切れません。「秦野市史」第一巻によれば、天平20年2月〈漆部伊波〉知識物を進上し外従五位下を授かる とあります。この記事(続日本記巻十七)は東大寺大仏造立に当たって知識物を献納した人々に対する叙位であり、しかも漆部伊波は時忠のことだというのが定説に近くなっているからです。

前回まで、鎌倉大仏が造立されるところから疑問だらけの経緯を見てきましたが、そこを追うだけでは謎は解けないのかもしれません。天平時代、すなわち鎌倉大仏造立の500年も前に何らかの動きがあって、そうしたことが地下水脈となって長い年月が経過し、鎌倉時代に至ってようやく地表に現れた、そんな視点も含んで見ていく必要がありそうに思えます

             ―鎌倉大仏の謎 その5に続く―

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