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信濃国の秦氏 その6


今回も和田堰に関連した事項から見ていきます。以下の関東農政局ホームページ記述を参照ください。

 梓川右岸は、明治になって開削された波田堰、黒川堰を除くと、ほとんどこの和田堰からの分水であり、つい近年まで頭首工のあった赤松から水を取り入れていました。和田堰は、神林堰、中川堰、新村堰、榑木(くれき)堰、島堰などを分水し、最も強い水利権を持っていました(しかし、江戸期になるとこの地域の支配は松本藩、高遠藩、幕府領と入り乱れ、厄介な水争いの原因となります)。


波田堰、黒川堰を除くとほとんどの堰が和田堰からの分水だそうで、この堰の重要性が見て取れますね。波田堰は明治のもののようですが、「波田」の名前が気になったので調べてみました。

松本市文化財ホームページに以下のように書かれています。

波多腰家は中波田にある旧家で、屋号を丸八といい、享保14年(1729)から代々庄屋を勤めていました。波多腰家が現在の敷地に移転したのは、寛延元年(1748)と伝えられています。
波多腰家住宅は、波多堰を開削完成させた波多腰六左の生家として知られています。元治元年(1864)に下波多村の庄屋となった六左(1839~1900)は、水利関係のある村々と折衝して波多堰開削の同意を得て、明治元年(1868)松本藩に開削を願い出て、許可を受けています。六左は心血を注ぎ、莫大な資材を投じて、延長75町21間(約8.3キロ)の波多堰を完成させ、200町歩の良田を開きました。六左は戸長、波多堰開渠掛、群会議員などを務め、藍綬褒章を受けています。
屋敷地には、主屋のほか、味噌蔵・米蔵・納屋・土蔵が並び、表門、中門、南門など11棟が登録有形文化財に登録されています。建物の建築年代は江戸時代から昭和時代にわたりますが、屋敷構え全体が良好に保存されており、近世における下波多村の庄屋層の屋敷景観をよく伝える貴重な遺構です。


ここで思わず声を上げそうになりました。松本市における秦姓はたったの一人、羽田姓でも11人です。では波多腰氏ではどうなのでしょう?検索すると驚くべき結果が出てきました。波多腰氏は長野県全体で100人。内訳は松本市が96人、安曇野市が4人です。松本市の96人はほぼ波田町に集中していると思われることから、波田町の秦氏とは波多腰氏だった可能性があります。ちなみに波多姓で検索すると長野県はゼロです。

しかし波多腰とは妙な名前(失礼しました)です。多分腰は別の文字だったのでしょう。どんな文字が適当か推測してみます。腰は越で秦越氏なのかもしれません。その場合は、中国の越出身の秦氏になります。北鎌倉の光照寺で書いた一遍は越智氏の出で、越智氏は越氏とも表記され、徐福の子孫と家伝書(内伝)には書かれています。しかし信濃国に徐福伝承はほとんど存在せず(注:元首相の羽田孜氏は先祖が始皇帝、徐福とされていますが…)、この可能性は薄そうに思えます。

もう一つの可能性は巨勢氏でしょうか?秦巨勢氏で適当かどうか考えてみます。まずは巨勢氏に関して以下Wikipediaより引用します。

巨勢氏(こせうじ)は大和国高市郡巨勢郷を本拠とした古代豪族。許勢、居勢とも書く。『記紀』によると武内宿禰の五男、許勢小柄宿禰を祖する。巨勢臣・雀部(ささきべ)臣・軽部臣につながる。6世紀以降、集中的に『日本書紀』に現れる。


内容が簡単すぎてよくわかりません。武内宿禰は富士山麓の秦氏でも登場し、子供には羽田八代宿禰がいます。でも彼は秦氏と直接関係はないはず。困りましたね。巨勢郷は秦氏の祖である弓月君の居住地である御所市朝妻とも近く、また九州では秦姓の多いうきは市も巨勢川があり巨勢氏の支配地域となっています。

その関係から波多腰氏は秦巨勢氏の名前が変化したものとも考えられますが、何の確証もないのでこの問題は一旦棚上げするしかありません。波田町には秦氏の匂いがプンプンするのに、波多腰氏がどのような存在かわからないという大きな謎が残ってしまいました。

ここまでの検証で、和田堰は秦氏の手で7世紀後半から8世紀初頭にかけて築造された点はほぼ確認できました。しかし、波多腰姓の謎と大野牧に関しては未確認なままとなっています。厄介な問題を残しながら今回は終了です。

              ―信濃国の秦氏 その7に続く―

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