ゲゲゲの女房 を見て思うこと


NHKの『ゲゲゲの女房』には、紙芝居や貸本マンガが急速にすたれていった様子も描かれています。しかし、すたれていったものはそれだけではありません。多くの謎めいた、あるいは秘密めいたこともまた、消滅の運命を辿ったのです。

酔石亭主が子供だった頃、神社の縁日などに行くと必ず人垣ができている場所がありました。人の輪の中心には香具師の方がいて、何やら怪しげな口上を述べています。

香具師:香具師(やし、こうぐし、かうぐし)とは、祭礼や縁日おける参道や境内や門前、もしくは位置が立つ所などで、露店で出店や、街頭での見世物などの芸を披露する商売人をいう。
                                 Wikipediaより引用


その立て板に水を流すような話に引き寄せられ見ていると、最後には決まって何かを売りつけられるのです。(彼らは商売をしているのですから、それも当然ですね)

なけなしの小遣いをはたいて彼らの売り物を買ってみると、ほとんどの場合口上とは異なるインチキ品でした。しかし不思議に騙されたとは思えません。あれだけ面白い話を聞かされれば、それだけで価値があると子供心に思ったのでしょうか?一番面白いと思ったのは次の様なものです。

長い口上の後香具師は、今あなたが聞きたいこと知りたいことを紙に書き、神様に祈りながら火であぶると、神様は必ずその答えを出してくれる、と言います。

そこで彼は、短冊形の紙を十数人の見物人に渡し、書きたいように書かせます。見物人が書き終わったら紙を回収して、時間の関係から全部はできないが、火にあぶって神様のお告げを頂けたか見てみましょう、と言います。

香具師はまず紙に書かれた内容を見物人に向かって話します。例えば一枚の紙を手に、この紙には、私はこれからどの方角に行けばいいか、と書いてあると言うのです。(紙には確かにそう書かれています)

あなたがどの方角に行くかはあなたの勝手だから、神様でも答えられないかも、などと冗談めかしながら、彼は紙を火であぶります。

すると驚いたことに、西に行きなさいとか、東に行くと良いことがありますといった答えが、黒々と紙に浮き出してきます。見物人のどよめきの中、彼はそれを高く掲げ、みんなに見せて廻るのです。

見物人の心を絡め捕ってから、彼の商売が始まります。この神様の有難くも貴重な紙を、今日は特別に百円でお分けします、しかし数に限りがあるので、欲しい人は急いでどうぞ、などと畳みかけるのです。

そう言われると、完全に洗脳された酔石亭主など、もう見境もなく飛びついてしまいます。なけなしの小遣いをはたいて買った紙を手に、急いで家に帰り、質問を書いて火にあぶってみます。

でも、単なるあぶり出しの茶色い文字で、ちょっと難しい、などと答えにもならない答えが出てくるだけ。答えは三通りほどあって、結局騙されてインチキ品を掴まされたと悟るのです。

でも、どうして香具師がやっているときは、質問に対してきちんと答えが出たのでしょう?
間違いなく見物の人たちに書かせたものだったのですが・・・。

首をひねりながら考えた末、酔石亭主は答えにたどり着きました。彼が、全部は時間の関係からできない、と言ったところにそのヒントがあります。

彼が火にあぶった紙は、自分で質問を書き、答えも書いたものだったのです。だから、見物の人たちが書いたものはどれ一つとして読まれなかった。なのに多くの見物人だけでなく、紙に質問を書いた人さえも、彼は他人の分を読んでいるのだな、自分の分は時間がなくて読めなかったのだろう、と自ら納得してしまうのです。

何と見事で巧みな心理操作ではありませんか。こうも見事にしてやられると、怒る気にもなりません。楽しい口上と面白いマジックを見せてもらった、その代金が百円だと思えば納得できるからです。

その他にも、ガマの油売り、何でも透けて見える箱、釜鳴りの術など様々な道具を用いた香具師たちの商売がありました。しかしこれらも、紙芝居や貸本マンガと時を同じくして、急速に消えていったのです。彼らはその後どのようにして生計を立てていったのでしょう?うまく商売替えができていたらいいのですが・・・。

元々、幻術や芸能、傀儡といった類の技能は、秦氏の流れを汲む者たちが担っていました。酔石亭主があの時見たものは、彼らの末裔が放つ最後の光芒だったのかもしれません。

スポンサーサイト

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

墓場鬼太郎 (3) (角川文庫―貸本まんが復刻版 (み18-9)) |水木 しげる

墓場鬼太郎 (3) (角川文庫―貸本まんが復刻版 (み18-9))水木 しげる角...

墓場鬼太郎 (4) (角川文庫―貸本まんが復刻版 (み18-10)) |水木 しげる

墓場鬼太郎 (4) (角川文庫―貸本まんが復刻版 (み18-10))水木 しげる...

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

酔石亭主

Author:酔石亭主
FC2ブログへようこそ!

最新記事
カテゴリ
最新トラックバック
月別アーカイブ
カレンダー
08 | 2017/09 | 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
天気予報

-天気予報コム- -FC2-
最新コメント
FC2カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
QRコード
QRコード
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる