尾張氏の謎を解く その26


前回までの検証結果から、現時点では以下のように整理されます。(注:あくまで現時点における整理です)

鏡(=天火明命)を奉じた四道将軍に象徴される集団、具体的には皇族の一人に率いられた第一次東方遠征部隊が崇神天皇時代の4世紀前半に大和から近江、美濃経由尾張に向かった。遠征部隊は製鉄・精銅の民伊福部氏、鉱山の民である金山彦など金属系のメンバーが主体で鏡作部も同行した可能性がある。伊福部氏は軍事氏族としての側面もあり、その意味でも遠征メンバーに加わるべき集団と言える。

彼らは美濃や尾張北部の開拓に注力したため、後になって天火明命や天香山命が尾張に来た話に転化された。後年尾張のほぼ全域を支配下に置いた尾張氏はその点の認識を有していた。記紀編纂時に天皇家は初期天皇たちの系図を捏造した。捏造系図の作成に際し、天皇家は初期天皇の部分に葛城族の小国家を充てることとした。

これに尾張氏を絡ませることで、系図はよりもっともらしいものとなる。よって初期尾張氏の系図に葛城族や葛木(葛城)の名を冠した娘が出現し、尾張氏の娘が考昭天皇皇妃で考安天皇の母となり、また崇神天皇の皇妃となる系図が作られた。尾張氏の加担に対する見返りとして、天火明命と天香山命を尾張氏の祖神とすることが了承された。こうした作為により、海人系である尾張氏の祖神が金属系の天火明命と天香山命になってしまい、後世の混乱を招く原因となった。

以上のように見てくると、尾張氏発祥問題の起点となる人物が崇神天皇であると明確になり、天皇により派遣された東方遠征部隊の動きがその後の尾張氏のありようを決めたと理解されます。尾張氏にとって崇神天皇は実に重要な存在だったのです。

また遠征部隊の活動領域は不破関を越えた濃尾平野北部が中心だったため、三角縁神獣鏡の出土は濃尾平野周縁部から尾張北部にほぼ限定されました。同様の理由で、天火明命や天香山命を祀る神社も尾張北部にほぼ限定されているのです。

三角縁神獣鏡_convert_20150106085350
三角縁神獣鏡の出土エリア・時代を示す地図。

古墳時代前期(4世紀)のⅠ期●、Ⅱ期■、Ⅲ期▼、Ⅳ期▲、Ⅴ期★、○は伝出土

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鏡のタイプを示す地図。

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威信財の出土エリアを示す地図。 ★石釧(☆10個)■車輪石 ◆鍬形石

(注:威信財とは大和王権などから贈られた特別な品物で、与えられた人の身分を表しています)

尾張氏の拠点は年魚市潟周辺なのに、彼らが祖神としているはずの天火明命や天香山命を祀る神社が尾張北部にほぼ限定されている謎に関しては「その1」で提起しています。しかし、上記のように考えればこの謎は簡単にクリアできると思われます。

けれども、この推定を正しいとするには、さらに幾つかの確認すべき事項があります。例えば、大和から尾張へのルート上に尾張氏が祀る尾張神社、尾治神社と言った名前の神社が数社でもあれば、酔石亭主の考えは誤りとなります。その場合はもう一度大和に立ち返って根本から見直さなければなりません。

酔石亭主の推定に沿った場合、尾張に遠征部隊と関係するような古墳があるかどうかチェックする必要があります。時代は当然崇神天皇期よりやや遅い年代となるはずです。また、畿内の古墳との類似性(遠征部隊を率いたのが皇族であれば崇神天皇陵との類似性)も確認されなければなりません。実はこの問題に関しては、「熱田神宮の謎を解く その27」にてある程度書いていました。

それが名古屋市守山区にあって志段味古墳群を構成する古墳の一つ、白鳥塚古墳です。白鳥塚古墳は形状が崇神天皇陵(行燈山古墳)に類似していること、埴輪がないなど畿内の古墳に酷似していることから、大和政権との関連性が指摘されています。築造時期は4世紀前半から半ばと見られます。上記の条件にほぼぴったり合致していますね。特に崇神天皇陵と類似しているのは、天皇の指示で東に向かった皇族の墓と考えれば筋もしっかり通ってきます。

既に書いたように、遠征部隊の指揮官を皇族とした場合、一体誰になるのかも検討対象となります。と言うか、そうしなければ真の意味で筋の通った話にならないのです。また遠征部隊の尾張国内における移動ルートも探る必要があります。さもないと、遠征部隊の指揮官がこの場所に葬られている筋道が付けられないからです。(注:現時点での推測にすぎませんが、遠征部隊はほぼ後代の東山道となるルートに沿って移動し、その後尾張に入ったものと思われます)

次の確認すべき事項は簡単なものです。皇族に率いられた東方遠征部隊(主力は伊福部氏)が尾張に向かったとすれば、大和から近江、美濃、尾張へと続くルート上に伊福部氏と関係する神社があるはずで、これも確認が必要です。

また、尾張氏の祖神とされる天香山命は、「その1」にて書いたように鉱山神となります。この神の別名は手栗彦(たぐりひこ)で、金山彦命は伊邪那美(いざなみ)の嘔吐(たぐり)から生まれていることから、天香山命は金山彦命と密接で、ルート上に金山彦命を祀る神社も存在しているはずです。

ここまで書いた中で、大きな謎が解けてきたと同時に、新たな問題が増えたようにも感じられます。それらをチェックするため鏡作坐天照御魂神社を後にしましょう。でもその前に、ある場所へ寄り道したくなりました…。

                   尾張氏の謎を解く その27に続く
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