尾張氏の謎を解く その106


今回は前回方県津神社との関連で取り上げた伊奈波神社を訪問します。鎮座地は岐阜市伊奈波通1-1。


鎮座地を示すグーグル地図画像。

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伊奈波神社の大鳥居と背後の金華山。左側の堂宇は善光寺。

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伊奈波神社の鳥居です。

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黒龍大神とあります。

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解説板。伊奈波神社は丸山から現在地に遷座したようです。

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当社はパワースポットだそうです。

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そこには二つの石が鎮座していました。

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解説板です。

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巨大な楼門です。

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神門と拝殿。

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拝殿です。

ざっと境内を見て廻りました。同社は金華山(稲葉山)の山麓に鎮座し、壮大なスケールを持つ神社と言えます。一宮や二宮より立派に見えるのは尾張国三宮の熱田神宮とも似通っています。

前回で少し触れたように伊奈波神社の祭神は、主祭神が垂仁天皇の第一皇子・五十瓊敷入彦命(いにしきいりひこのみこと)、配祭神が主神の妃・淳熨斗媛命(ぬのしひめのみこと)、主祭神の母・日葉酢媛命(ひばすひめのみこと)、主祭神の外祖父・彦多都彦命(ひこたつひこのみこと)、主祭神の功臣・物部十千根命(もののべのとおちね)となっていました。同社の由緒は以下のホームページを参照ください。
http://www.inabasan.com/inabasan/inabasan/inabasan.html

方県津神社の由緒では伊奈波神社祭神が彦多都彦命となっているのに、伊奈波神社の由緒では主祭神が五十瓊敷入彦命で彦多都彦命は配祭神の扱いとなっています。妙だとは思えませんか?この背後にはきっと何かありそうです。

五十瓊敷入彦命とはどんな人物でしょう?丹波道主命(=彦多都彦命=彦坐王)と河上之麻須郎女命の子が日葉酢媛命で、日葉酢媛命と垂仁天皇との間に生まれた皇子が五十瓊敷入彦命となります。そして五十瓊敷入彦命の妃が淳熨斗媛命。五十瓊敷入彦命の功臣が物部十千根命ですから、一見すると伊奈波神社の祭神に関する筋は通っているようにも思えますが、微妙な違和感が残ってしまいます。

違和感の原因は同社の主祭神・五十瓊敷入彦命にあり、美濃に進軍した彦坐王と整合しない要素が存在します。五十瓊敷入彦命が彦坐王と整合しないのは、彼が物部氏と深い関係を持つ部分で、Wikipediaには以下の記載がありました。

五十瓊敷命は老齢のため、石上神宮神宝の管掌を妹の大中姫命に託した。大中姫命は、か弱いことを理由に神宝を物部十千根に授けて治めさせた。これが物部氏による石上神宮での神宝管掌の起源という。

もう少し詳しく知るため以下Wikipediaより引用します。

社伝によれば、五十瓊敷入彦命は朝廷の命により奥州を平定したが、五十瓊敷入彦命の成功を妬んだ陸奥守豊益の讒言により、朝敵とされて現在の伊奈波神社の地で討たれたという。
社伝によれば、景行天皇14年、武内宿禰が稲葉山北西の椿原(現在の岐阜公園内の丸山)に五十瓊敷入彦命を祀ったのに始まるとされる。壬申の乱の際に天武天皇が当社に戦勝を祈願したという。天文8年(1539年)、斎藤道三が稲葉山に稲葉山城を築城するにあたり、現在地に遷座した。この際、その地にあった物部十千根命を祀る物部神社を合祀し、稲葉山城の鎮守とした。


武内宿禰に稲葉山(因幡山)と来れば因幡国系伊福部氏の関係も想定されますが、物部氏の影響の方が強いようにも思えてきます。また伊奈波神社は「延喜式神名帳」の編纂当時に存在していたはずなのに、記載の無い神社すなわち式外社となっており、合祀した物部神社の方が式内社となっているのも妙な話です。「岐阜城跡の調査」には以下のような記載がありました。

稲葉山は伊奈波神社の旧社地であったとされる。『伊奈波神社略志』によると、当初の伊奈波神社は現在の地ではなく、稲葉山中腹の椿原(現在の丸山)にあり、峯本宮は稲葉山頂にあったとされる(丸山の位置は資料63参照)。また伊奈波神社では、丸山の麓に神主館等の施設があったと伝わっている。稲葉(因幡)および椿原という地名は、延文4年(1359)調進の伊奈波神社の縁起『美濃国第三宮因幡社本縁起』に見られる。縁起には、祭神の因幡大菩薩である五十瓊敷入彦命(いにしきいりひこのみこと)の一族を祀るため、景行天皇の命を受けた武内宿禰が、「椿原金山」のふもとに社殿を構えたことが伊奈波神社の創祀であるとされている。この「椿原金山」という地名は、鏡を破る金石が奥州より美濃に運ばれ、一夜にして原が山となったという同縁起内の記述に基づくもので、「因幡(稲 葉)山」「椿原」という名称の所以はここに語られている。

「岐阜城跡の調査」に関するPDF。
http://www.city.gifu.lg.jp/secure/10437/3-123.pdf

「岐阜城跡の調査」によると、「美濃国第三宮因幡社本縁起」には「祭神の因幡大菩薩である五十瓊敷入彦命(いにしきいりひこのみこと)の一族を祀るため云々」と言った内容が書かれているそうです。実際にはどうかチェックしてみましょう。「美濃国第三宮因幡社本縁起」は以下となります。
http://www.lares.dti.ne.jp/hisadome/honji/files/INABA.html

縁起を見ても一族を祀るためと言った記載は見られないようですが、彼が因幡守に補任されたとの記事が出てきました。しかし、別の史料や伝承で五十瓊敷入彦命が直接因幡国に関与したとする記述はなさそうです。

一方で、彦多都彦命が因幡大神とする説もあり、こちらの方が正しそうに思えます。いずれにしても様々な混乱があり非常にややこしそうなので、この問題は次回でさらに検討してみます。祭神の問題は次回に先送りするとして、伊奈波神社が彦坐王の遠征部隊と関係する場合、当然金属との関係が出てくるはずですが、この点はどうなのでしょう?

同社ホームページにある「古縁起について」、「美濃国第三宮因幡社本縁起事」を読むと、金の大明神とか、金山においてとか、因幡大菩薩垂迹の地だから因幡山と号すとか、鏡を破るがゆえに破鏡山などと書かれていました。彦坐王に率いられ遠征部隊の主力は製鉄、精銅族の伊福部氏であることからすれば、伊奈波神社とその周辺地域が金属と関係があってもおかしくはありません。そうした視点から見ていきましょう。

金華山の麓を鵜飼で有名な長良川が流れ、長良(ながら)は砂鉄に関連する名前で、現代においてもこの砂鉄で刀を作った方がおられるそうです。(注:美作国の中山神社鎮座地も長良嶽の麓でした)岐阜新聞には、加茂郡富加町加治田の刀匠吉田研さん(59)=刀匠名・兼久=が地域の長良川河川敷の砂鉄を使って日本刀を制作した、とありました。従って、伊奈波神社においても金山彦命が祀られているのは間違いないところです。(注:加茂郡富加町加治田の地名は鍛治に関係がありそうで、伊福部氏がいたかもしません)

問題は、今まで見てきた中に金山神社は見当たらないことです。仕方がないので駐車場に戻ったところ、駐車場の脇にも祠があり、金山大神と石柱に刻まれています。

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金山大神です。

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社殿。

ここには鉱山や金属を司る金山彦命も祀られていると確認できました。金華山南の瑞龍寺山には弥生時代後期(西暦100年代)の墳墓とされる瑞龍寺山頂遺跡があって、遺跡からは破砕された舶載内行花文鏡等が出土しており、景行天皇や垂仁天皇以前の歴史があると理解されます。

         尾張氏の謎を解く その107に続く
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No title

また失礼します。
駐車場の小さいのが金属神でしたか。そこまで見てませんでした。
国道418は根尾から古い土地柄のところを通っていますね。地図を見るのは楽しいですね。川辺町の飛騨川を上っていくと金山という地名が出てきます。さらに上って濃飛横断自動車道という長いトンネルの先に妙見神社となっているところが謎の金山巨石群です。先日見てびっくりしてきました。

Re: No title

ばべ様

伊奈波神社の祭神問題は思ったより難しく書き終えるのに四苦八苦しました。
地図を見ていると古代を反映する地名もあって実に面白いです。「その107」でもそうした例を書きました。
飛騨も面白そうですね。行きたい場所は山ほどありますが、なかなか実行に移せません。
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