尾張氏の謎を解く その131


浜神明社以外にも幾つか元伊勢中島宮比定地があり、愛知県一宮市萩原町中島に鎮座する中嶋宮(丸宮神明社)も有力候補地となっています。


鎮座地を示すグーグル画像。廃寺と思われる長隆寺のお隣が鎮座地となります。

「一宮市今伊勢町史」は、ここが中島郡の中心地旧中島村(一宮市萩原町中島)であること。中島字丸宮にあった神明社(今は中島宮に合祀)は天照大神を祭神とし、古くから倭姫命の中島宮と言い伝えられていること。旧丸宮神明社の東南に島崎の古字名があり、倭姫命はここから出帆されたと伝えられていること、などから最有力候補にしています。

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途中には昭和を髣髴とさせるような商店街がありました。

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もう一枚。

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商店街の手前は田んぼが広がっています。

なぜこんな場所に商店街があるのかちょっと不思議な感じがします。さらに進むとこんもりした森が見えてきました。

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中島宮の社叢。

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社号標。

樹木に隠され見えませんが、中嶋宮と刻まれています。やけに背が高くしかも円柱の社号標は珍しいと思ったら、伊勢湾台風で倒れた第一鳥居を利用しているようです。

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境内。思ったよりも立派な社殿です。

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立派な拝殿。

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本殿。

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解説板。画像サイズを大きくしています。関連部分を以下に記載します。

人皇第十一代垂仁天皇の第四皇女で皇大神宮(伊勢神宮内宮)を創建された倭姫命が、天照大神を奉斎する地を求めて、各地を巡幸された折り、当地に三ヶ月間逗留し、奉斎されたという中嶋宮跡に位置する丸宮神明社は、ことのほか村民の信仰が篤く、倭姫命が伊勢に旅立つ時大提灯を掲げて見送った名残と云われる提灯ともし(毎年八月十五日)や各字の入口には伊勢常夜灯があって、大神宮の祭礼も今なお行われています。

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解説板の位置関係図。

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各位置の内容。①が丸宮神明社でした。

纏めれば、中島村には八剱社の他に丸宮神明社も含めて六社あり、大正六年になって八剱社に合祀されたが、丸宮神明社は中嶋宮跡に鎮座しており村民の信仰も篤いため、昭和三十九年に主神を天照大神として社名も中嶋宮に改めたもの、となります。

中島宮に関してあれこれ検討しましたが、決定打となるような候補地は見当たらないようです。中島宮は伊勢に向かう通過地で倭姫命はやや長期間仮泊しただけなのでしょう。ともあれ、ようやく一行は尾張一宮の真清田神社付近に至りました。(注:位置的には旧丸宮神明社の中島宮が真清田神社より南となります)同神社に関しては「新春の真清田神社 その3」、「新春の真清田神社 その4」などで書いていますので、参照ください。ここでは真清田神社由緒の一部分を再度掲載します。

神社明細帳によれば当社の創建は崇神天皇の御代のこととされるが、当社の社記によれば、神武天皇33年3月3日、天香山命がこれを斎き祀った。天香山命の別名は石凝姥命(いしこりとめのかみ)又は高倉下で、…以下略。

既にご存知のように真清田神社の真清は曇りのない鏡を意味し、石凝姥命は鏡作連の祖神となります。でも、なぜ真清田神社に鏡と関係する要素があるのでしょう?真清田神社の宝物の中には五鈴鏡(ごれいきょう)があり、これは鏡の周囲に五個の鈴が付いた鏡です。ただ、鈴鏡の出土は関東から中部地方が中心であり、時代的には古墳時代後期とされ、崇神天皇の時代からはずっと後の話となってしまいます。

もちろん彦坐王と別れた伊福部氏の遠征部隊は鏡(=天火明命)を奉じていたので、真清田神社は鏡に関係すると言った説明は可能です。しかしそれだけではすっきりしないので、この問題を少し異なった視点で見ていきましょう。

一宮市には大神神社が鎮座しており、同社の社伝によると、大神神社と真清田神社を相殿として一宮としたとされます。その南には多氏系の大神社が鎮座しています。真清田神社の北には元伊勢中島宮とされる酒見神社が鎮座しています。これらは何を意味しているのでしょう?

大和においては三輪山を祭祀する大神神社、三輪山から昇る太陽を祭祀する多神社(多神社の若宮となる竹田神社は祭神が天火明命或いは天香山命)が鎮座し、元伊勢第一号の笠縫邑がありました。大和には天火明命を祭神とする鏡作坐天照御魂神社が鎮座しています。真清田神社の由緒のように同社を斎き祀った天香山命の別名は鏡作連の祖神・石凝姥命となります。よって、鏡作坐天照御魂神社に対応する神社に真清田神社を充ててもおかしくはありません。

大和と尾張(一宮市)の対応関係は以下のようになります。

大神神社(大和)=大神神社(尾張)
多神社(大和)=大神社(尾張)
笠縫邑(元伊勢、大和)=中島宮(元伊勢、尾張)
鏡作坐天照御魂神社(大和)=真清田神社(尾張)

上記から、一宮市のありようは大和とほとんど同じ(コピー)になっていると理解されます。こうした対応関係もまた、鏡と関係し祭神が天火明命となる真清田神社が鎮座する要因になったものと思われます。

以上、伊福部氏に護られながら中島宮にまで至った倭姫命一行は、同地に三ヶ月ほど滞在し、ここから船に乗って伊勢の地に向かいました。疑問に思えるのは、他の多くの元伊勢が滞在期間数年間であるのに対し、中島宮は三ヶ月しかない点です。これでは奉斎期間と言うより、一時的な滞在でしかありません。なぜこんなことになったのか、理由を考えてみましょう。

倭姫命のこれまでの移動は陸路でした。途中幾つもの大河を渡りますが、基本的には小舟で対応可能と思われます。ところが、中島宮からは海路となるのでより大型の船を準備する必要があると推測されます。中島宮における三ヶ月の滞在とは、一行が伊勢に向かうための船の調達準備・建造期間を意味するのではないでしょうか?その傍証となりそうな事実もあります。

例えば、美濃国における元伊勢・伊久良河宮のすぐ近くには本巣郡舟木郷があり、同地は船の用材を供給する舟木氏(多氏と同祖)の拠点の一つでした。中島宮から伊勢への移動途中と思われる四日市市には舟木直の祀る耳常神社が鎮座しています。伊勢国多気郡相可郷(三重県多気郡多気町)は舟木直の本拠となります。

倭姫命の移動ルート上に舟木氏の拠点が点在しているのは単なる偶然でしょうか?例えば伊久良河宮で倭姫命から今後の予定経路を聞き出した舟木氏が、倭姫命の移動ルート上近くに拠点を設けたのかもしれません。また員弁郡の名前の元となった猪名部氏は造船に関与する一族です。これらから、舟木氏と猪名部氏が協力して倭姫命の船を建造した可能性までも浮上してきます。

さて上記の点は別として、一宮市の一帯はかつて伊勢神宮の神領であり、これが元伊勢・中島宮伝説発祥の原因となった可能性もあると思われます。中島宮比定地を何か所か巡りましたが、伝承の内容に新しさを感じた面もあり、そうした印象に繋がりました。

伊勢に行く途中の桑名や津、亀山、松坂などにも元伊勢の伝承が残っていますが、伊福部氏は多分中島宮で倭姫命の一行を見送り任務を果たしたものと思われます。伊福部氏は一宮市からさらに南下を続けた模様で、彼らには丹波で加わった海部氏の一部も同行していたと思われます。

以上、倭姫命一行を警護しつつ尾張に入った伊福部氏の動きを見てきました。次回以降の伊福部氏に関しては元伊勢伝承と関係のない記事になります。伊福部氏の動きは既に書いたように尾張氏発祥の謎と密接に関係していますが、推論部分も多いので、もっと決定的な証拠を探すべきでしょう。まだまだ尾張氏の謎解きには難しい部分があるのです。

伊福部氏に関連する元伊勢の検討も終わったので、尾張氏の謎探索はまた一旦小休止することとします。

                尾張氏の謎を解く その132に続く
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舟木・舟木氏族について

初めまして舟木といいます。舟木氏族研究をしています。大変に貴重な情報を有難うございました。


Re: 舟木・舟木氏族について

舟木さん

コメントありがとうございました。拙文がご参考になったとのこと、お役に立てて幸いです。

舟木氏に関しては伊勢国多気郡舟木村が起源とされているようですが、舟木姓が一番多いのは松江市になります。松江市のある島根県のお隣の県は鳥取県ですが、三重県の猪名部神社の近くに鳥取の地名もあります。あれこれ見えないところで繋がっているのかもしれません。なお、舟木氏に関しては以下のホームページでほぼ網羅されていますのでご参照ください。
http://kamnavi.jp/log/funaki.htm

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