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酒匂川石の生い立ち

酒匂川あれこれ
02 /13 2010

私は今のところ酒匂川に絞って探石していますが、では酒匂川石はどうのようにして生まれたのか、その生い立ちを遠い過去にまでさかのぼって考えてみましょう。

酒匂川の足下には国府津―松田断層と呼ばれる断層が走っています。この断層は実はフィリッピン海プレートと北米プレートとがせめぎ合っている場所であり、フィリッピン海プレートは伊豆半島を八の字のように挟み本州に衝突して沈みこんでいるのです。

この八の字の先端は富士宮辺りにあるとされ、ここはフィリッピン海プレート、ユーラシアプレート、北米プレートの三つのプレートが収束しせめぎ合う極めて特異な場所で、プレートの陸上三重点となっています。

一方国府津―松田断層は太平洋に入って相模トラフとなり、そのまま太平洋プレート、フィリッピン海プレート、北米プレートが会合する伊豆・房総沖海溝三重点に接続していきます。つまり壮大なプレート活動の収束点がこの日本に二つもあり、国府津―松田断層はその一翼を担っている訳です。

丹沢は元々南海にあった海底火山がフィリッピン海プレートによってどんどん本州側に押され、北米プレートと衝突し、背後から迫る伊豆半島と本州の間に挟まれ、巨大な圧力を受けて隆起し形成されたものです。南海の底で安らかな日々を過ごしていたのに、自分の意に反して日本列島の内部にまで押し込まれ、もみくちゃにされていたなんて、まるで強権的な上司と言うことを聞かない部下に挟まれた中間管理職みたいですね。

以上のような経緯により、丹沢には丹沢層群という1500万年前の火山活動でできた凝灰岩の地層がひろがり、一方でサンゴの化石を含む石灰岩も見られます。また深成岩の石英閃緑岩や、これらが圧力によって変成された変成岩、結晶片岩、あるいは熱によって変成されたホルンフェルスなども存在します。丹沢の地質は、地殻変動の激しさのせいか、総じてもろく、関東大震災の折にはあちこちで崩落現象が起きています。丹沢って思ったより複雑ですね。

酒匂川石の元となる岩石は、このように形成されていきました。それが砕かれて川に落ち、石同士がこすれあって磨かれ、奇跡的に一定の質と形状を得たものが、一個の水石としてようやく私たちの手もとにたどり着くのです。

地球規模のプレート間のせめぎ合いがなければ、酒匂川石は存在することすらなかった。とても不思議だとは思いませんか? 一個の石を愛でるとき、山水の景情を連想するだけでなく、その石に秘められた長い歴史の変転にも思いを馳せてください。そうすることで、より鑑賞の興趣が高まることでしょう。
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